低圧室内で思う事

今の職場では低圧室を日常的に使っている。

低圧室とは、金属でできた個室なんだけど、個室内の空気を抜くことで様々な高度における大気の状態を模擬できる装置だ。
常圧低酸素室(圧力は変わらないけど酸素だけ薄くなる部屋)はけっこう色々な所にあるんだけど、圧力を下げられる部屋はそう簡単には無い。

圧力を下げると様々な現象が起きるけど、その中でも人体に起きる主な障害として「減圧症」と「低酸素症」が上げられる。

<減圧症>
圧力が下がると水に溶けていた気体が泡となって出てくる。これは人体でも起きていて、体液中に溶けていた窒素が圧力が下がるに従って泡となって出現し、体のあちこちに詰まってしまって「減圧症」という症状を引き起こす。
高度2万メートルぐらいでは37℃の液体は沸騰するので、当然、宇宙服のようなもので体を覆わない限り人間が生きることはできない。エベレストが2万メートルも無くて良かったね。

ところで、昆虫ってめちゃくちゃ生命力が強いらしい。
有名どころではゴキブリとかクマムシとか。どんな環境でも生きていられそうな感じだ。

そこで、その辺の草むらで昆虫を捕まえて、高度2万メートルと同じ圧力の部屋に入れてみることにした。

捕まえたのは体長60mmほどのショウリョウバッタ。
他の実験機材と一緒に、バッタを入れて、圧力を下げていく。
富士山ぐらいの高さ(3776m)になるとびっくりしたのかピョンピョン跳ねる。
その後は静かになってエベレストの高さ(8848m)を越えても全く変化ない。
もう死んでしまったのか?と思ってよく見ていると時々動いて、生きている事がわかる。
高度2万メートルが近付き、37℃の水が沸騰を始めた時、突然バッタが大きく跳ね、そして動かなくなった。
やはり、バッタもこの超低圧環境に耐えることができず、最後の力をふりしぼり跳ねたのか。さながら断末魔の叫びのように。
ああ、ショウリョウバッタよ。きみは僕の自己中心的かつ残忍な行動によって殺されてしまったんだ。僕の好奇心が1つの尊い命を奪ったんだ。
ショウリョウバッタよ。ごめん。お墓作るね。

実験を終え、地上高度に戻ると、バッタさんぴんぴんしてるし。
何事も無かったかのようにピョンピョン跳びながらおうちに帰っていきました。
バッタすげえ。

<低酸素症>
肺の中の酸素が足りないと、脳に十分な酸素が供給できず、様々な症状が起きる。これが「低酸素症」だ。
低圧室内では常に酸素マスクをしている。しかし、パイロットの訓練の為などでわざと酸素マスクをはずす事もある。

先日、僕も標高7500mと同等の環境で酸素マスクをはずし、あえて低酸素症を経験をした。
通常、このぐらいの高度では3~5分程度しか意識を保っていられず、これ以上長くいると気を失ってしまい、死に至る。
何日もかけて高度順応すれば、どうにか人間が生きていられる標高ではあるけど、急にこの環境にさらされると、人間は5分ぐらいしか活動できないのだ。

2年前にも同様の経験をしたのだが、その時は恐怖心が強く、1分程度で酸素マスクを装着してしまった。
今回は、「ちょっと粘ってやろう」と考えていた。
安全管理上、SpO2:60%以下、または5分で強制的に終了になるが、それまでは粘ろうと考えた。
さらに、どうせやるなら高所登山で行うような呼吸法を実践し、SpO2をなるべく高く保ってみることにした。

この体験では、低酸素症による思考力の低下などを認識させるために、簡単な計算問題を解き続ける。
低酸素室には過去最高のパフォーマンスを発揮した人の計算用紙が貼り出されている。それを見ると、地上で5分あれば十分に達成できるレベルだ。しかし酸素マスクをはずしている5分間にできるかどうか…。

低圧室は7500mに達し、いよいよ酸素マスクをはずす時がきた。
マスクをはずし、計算を始める。あまりに集中しすぎると脳の酸素消費量が増えそうな気がして、リラックスしつつ鉛筆は猛スピードで走らせる。
呼吸はしっかり腹式呼吸をして、少ない酸素を最大限取り入れる。
1分ごとにSpO2を確認する。明らかに周りの人よりも高い値だ。これなら5分はもちそうだ。
周りの人がSpO2:60%以下まで下がり強制終了となる中、僕だけ計算を続ける。

低酸素症独特の熱感と手のしびれを感じる。
僕は1500mとかを真面目に走ると、この手のしびれを感じる。末梢の組織の酸素不足なのか?
息苦しさは全く無い。

5分が経ち、強制終了。
計算は最高記録を突破した。

ま、そんなもん狙ってる人誰もいないので、何の価値もないです。
けど、高所においても、しっかり呼吸すればSpO2の低下を抑えられることが実証できて良かった。
これは高山病の予防及び、高所でのパフォーマンス発揮に大いに役立つ。

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