八丈島で辺境クライミングの体験をした
辺境クライミング(通称「辺クラ」)は、当時、京都府立医大の学生だった(現在は医者の)「けんじり」が創った言葉だ。
これは、辺境(主に離島)で谷を遡行し、未だ人類が(遡行の意図を持って)通過していない空白地域を埋めていく作業だと僕は認識している。未知への挑戦と言う点で価値のある行為だが、一般のクライマー、ましてや登山者からの支持を得られるとは到底思えない記録が、なぜかロクスノで連載され、今やカラーページだ。
ロクスノ読者は辺クラ記事を本当に読んでいるのか甚だ疑問だが、読めば登攀の質は高くないことが伺える。記事の大半は地域研究に費やされ、もはや登攀の記録かどうかも怪しい。
しかしなぜだろう、なんだかワクワクが満ちているような気がするのは。
その秘密を探るべく、けんじりと八丈島で辺クラしてきた。

往路は夜行フェリー。「席無し券」をお勧めします。広い甲板でゆったり寝られます。
ヒッチハイクした車の中で学生らしき車の持ち主から質問された「どうして始めたんですか?」の問いに、けんじりは「そこに谷があるから、かなー」と答えた。
始めた動機に対する答えとしてはおそらく間違っているが、辺クラを続けている理由は「そこに谷があるから」に間違いない。
けんじりはスマフォの地図アプリを駆使して、八丈島中の、いや、日本中の海岸線のくびれをチェックしている。アプリで集水域を計算し、地形の特徴と集水域から行くべき谷を探すのだ。谷があるからそこに行く。

地形図で水線が描かれ、集水域も十分なはずの谷でこの水量。
集水域の多い、つまり水の豊富な谷から優先的に攻めていくことにしたが、大きな誤算があった。
谷に水が無いのだ。最初に行った谷なんて海岸線の滝(最も水量が多い場所のはず)で10滴の滴りがあるだけだった。上の写真は一応、水が流れているので八丈島としてはめちゃめちゃ水量の多い谷という事になる。
一方、地形図上では集水域ゼロの崖に滝マークがあったりする。その滝が下の写真。

崖の途中から水が噴き出す名古の滝。
滝の上は尾根なので、地表を水が流れるとしたら、ここには絶対に水流は存在し得ない。地下水脈を通って岩の隙間から水が噴き出しているらしい。
どうやらこの島は地表の形状とほぼ独立して水脈が存在しているようだ。降った雨は地表を流れずに一瞬で地面に吸い込まれ、地下水脈を通って海に流れるのだろう。
さて、そうなるとどの谷を遡行すべきかよくわからない。
でも外せないのは洞輪沢(ぼらあさわ)の名古川だ。洞輪沢と言う地名は興味を惹かれるし、地形図上の溝の深さも十分だ。溝が深いってことは流石に水流もあるだろう。それが下の写真。

洞輪沢ゴルジュ。護岸工事されているのが勿体ない。このゴルジュが海とどのように繋がっていたのだろうか。
さて、3日で6本の谷や滝を遡行したが、最も楽しかったのが崖から噴き出す名古の滝で、最も困難だったのが洞輪沢の名古川だ。他の谷もそれぞれ独特の雰囲気が有り、辺クラの楽しさを存分に味わうことができた。

八丈島は円筒状の滝が多い。

これなんて完全な円筒。
言っている意味がわからないかも知れないが、360度以上、垂直の壁に阻まれている。つまり、ただの行き止まりじゃなくて、渦巻き状に行き止まる。
そうなるとかなり大きく高まくか、垂直の壁を登るしか選択肢は無い。

ピッチの途中でショルダーハンマーを繰り出す。
ジャングル特有の弱い植生に苦労しつつ、ジワジワと側壁を登ったり、猛烈な垂直な藪を漕いだりする。
時にはピッチの途中でショルダーして、その上からハンマー投げる、など。もう意味がわからない。

ゴミの滝を登ることもあれば、立派なヒョングリ滝をツタを利用して登ることもあった。
岩ではなくて、硬い土にエイリアンをキメて振り子トラバースとか。

硬い土の登攀に苦労する。

それでも海から谷を遡行すると言う経験は初めてで、終始、愉快な遡行だった。





詳しい遡行記録はけんじりが発表してくれると思うので、このブログでは割愛。
最終日は「八丈島のキョン」を見にいった。
八丈島に野生のキョンはおらず飼われている数頭がいるだけだ。それに対して伊豆大島では野生化したキョンが1万頭いるらしい。なぜ「八丈島のキョン」だったのか…。

キョンがキョン足する姿はついに見ることは無かった。
そもそもあのギャグマンガの「八丈島のキョン」はキョン足ではないような気がするのだが。
こうして僕らの辺クラ体験は終わったのだが、非常に有意義であった。
辺クラのエッセンスはちょっとわかった気がしたし、登攀内容もこれまで経験したことのないもので面白かったし奮闘的でもあった。
キャンプ場も快適で、スーパーも飲食店も充実していてアフタークライミングも申し分ない。
そして、ヒッチハイクの成功率がめちゃくちゃ高い。

もう八丈島に沢登りで行くことは無いと思うけど、離島の風情、暖かさは心地の良い物でした。
ちょっとまた、違う離島も行ってみたいな、なんて思ってしまうのだから、やっぱり辺クラには辺クラの良さがあるんだな。
これは、辺境(主に離島)で谷を遡行し、未だ人類が(遡行の意図を持って)通過していない空白地域を埋めていく作業だと僕は認識している。未知への挑戦と言う点で価値のある行為だが、一般のクライマー、ましてや登山者からの支持を得られるとは到底思えない記録が、なぜかロクスノで連載され、今やカラーページだ。
ロクスノ読者は辺クラ記事を本当に読んでいるのか甚だ疑問だが、読めば登攀の質は高くないことが伺える。記事の大半は地域研究に費やされ、もはや登攀の記録かどうかも怪しい。
しかしなぜだろう、なんだかワクワクが満ちているような気がするのは。
その秘密を探るべく、けんじりと八丈島で辺クラしてきた。

往路は夜行フェリー。「席無し券」をお勧めします。広い甲板でゆったり寝られます。
ヒッチハイクした車の中で学生らしき車の持ち主から質問された「どうして始めたんですか?」の問いに、けんじりは「そこに谷があるから、かなー」と答えた。
始めた動機に対する答えとしてはおそらく間違っているが、辺クラを続けている理由は「そこに谷があるから」に間違いない。
けんじりはスマフォの地図アプリを駆使して、八丈島中の、いや、日本中の海岸線のくびれをチェックしている。アプリで集水域を計算し、地形の特徴と集水域から行くべき谷を探すのだ。谷があるからそこに行く。

地形図で水線が描かれ、集水域も十分なはずの谷でこの水量。
集水域の多い、つまり水の豊富な谷から優先的に攻めていくことにしたが、大きな誤算があった。
谷に水が無いのだ。最初に行った谷なんて海岸線の滝(最も水量が多い場所のはず)で10滴の滴りがあるだけだった。上の写真は一応、水が流れているので八丈島としてはめちゃめちゃ水量の多い谷という事になる。
一方、地形図上では集水域ゼロの崖に滝マークがあったりする。その滝が下の写真。

崖の途中から水が噴き出す名古の滝。
滝の上は尾根なので、地表を水が流れるとしたら、ここには絶対に水流は存在し得ない。地下水脈を通って岩の隙間から水が噴き出しているらしい。
どうやらこの島は地表の形状とほぼ独立して水脈が存在しているようだ。降った雨は地表を流れずに一瞬で地面に吸い込まれ、地下水脈を通って海に流れるのだろう。
さて、そうなるとどの谷を遡行すべきかよくわからない。
でも外せないのは洞輪沢(ぼらあさわ)の名古川だ。洞輪沢と言う地名は興味を惹かれるし、地形図上の溝の深さも十分だ。溝が深いってことは流石に水流もあるだろう。それが下の写真。

洞輪沢ゴルジュ。護岸工事されているのが勿体ない。このゴルジュが海とどのように繋がっていたのだろうか。
さて、3日で6本の谷や滝を遡行したが、最も楽しかったのが崖から噴き出す名古の滝で、最も困難だったのが洞輪沢の名古川だ。他の谷もそれぞれ独特の雰囲気が有り、辺クラの楽しさを存分に味わうことができた。

八丈島は円筒状の滝が多い。

これなんて完全な円筒。
言っている意味がわからないかも知れないが、360度以上、垂直の壁に阻まれている。つまり、ただの行き止まりじゃなくて、渦巻き状に行き止まる。
そうなるとかなり大きく高まくか、垂直の壁を登るしか選択肢は無い。

ピッチの途中でショルダーハンマーを繰り出す。
ジャングル特有の弱い植生に苦労しつつ、ジワジワと側壁を登ったり、猛烈な垂直な藪を漕いだりする。
時にはピッチの途中でショルダーして、その上からハンマー投げる、など。もう意味がわからない。

ゴミの滝を登ることもあれば、立派なヒョングリ滝をツタを利用して登ることもあった。
岩ではなくて、硬い土にエイリアンをキメて振り子トラバースとか。

硬い土の登攀に苦労する。

それでも海から谷を遡行すると言う経験は初めてで、終始、愉快な遡行だった。





詳しい遡行記録はけんじりが発表してくれると思うので、このブログでは割愛。
最終日は「八丈島のキョン」を見にいった。
八丈島に野生のキョンはおらず飼われている数頭がいるだけだ。それに対して伊豆大島では野生化したキョンが1万頭いるらしい。なぜ「八丈島のキョン」だったのか…。

キョンがキョン足する姿はついに見ることは無かった。
そもそもあのギャグマンガの「八丈島のキョン」はキョン足ではないような気がするのだが。
こうして僕らの辺クラ体験は終わったのだが、非常に有意義であった。
辺クラのエッセンスはちょっとわかった気がしたし、登攀内容もこれまで経験したことのないもので面白かったし奮闘的でもあった。
キャンプ場も快適で、スーパーも飲食店も充実していてアフタークライミングも申し分ない。
そして、ヒッチハイクの成功率がめちゃくちゃ高い。

もう八丈島に沢登りで行くことは無いと思うけど、離島の風情、暖かさは心地の良い物でした。
ちょっとまた、違う離島も行ってみたいな、なんて思ってしまうのだから、やっぱり辺クラには辺クラの良さがあるんだな。
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