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Dumbartonで登った

スコットランドのDumbartonで5日間ほどクライミングをしてきました。

同行者はコミネッチさんと、アサコさんと、クラカミさん。
コミネッチさんは退職のタイミングでイギリス遠征を計画し、アサコさんはBMCミーティングで渡英予定で、クラカミさんはスコットランド北部の岩場で開拓するとのこと。これは集合して一緒に登らない手は無い!
ということで、僕たち4人はグラスゴーの安宿に集合しました。

イギリスのクライミングについて少し説明します。
イギリスの岩場には基本的にボルトはありません。つまり、カムやナッツでプロテクションを構築しながら登る必要があります。このようなプロテクションは岩の割れ目(クラック)を利用して構築します。だから、クラックが無い岩の場合はプロテクションが構築できず、落ちた際にケガするリスクなどが増えます。他の国では、このようなリスクを排除するためにボルトが打たれるのですが、イギリスではボルトを打たない文化なので、このリスクを受け入れつつ登ることになります。
なので、グレードも単なる難易度を表すだけではなく、リスクの大きさも加味された表記になっています。これがイギリスのEグレードシステムです。

ここDumbartonはスコットランド初のE9ルートと8aボルダーが開拓された岩場で、「Rhapsody(E11)」という超高難度課題もあります。そしてScotland finest crackに選出された「Requiem(E8)」と「Chemin de Fer(E5)」が看板ルートです。



岩の頂上に抜ける超おいしいクラックが「Requiem(E8)」で、左のクライマーが取り付いているクラックが「Chemin de Fer(E5)」です

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「Chemin de Fer(E5)」核心部のコミネッチさん。
コミネッチさんはこの後、2便目で華麗にレッドポイント。
アサコさんと僕はそう簡単には登れずトップロープで練習したりしました。

そして最終日の1便目でアサコさんレッドポイント!これには正直驚きました。本人も2便目にかけるみたいなことを言っていたので。

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そして次は僕の番。
このルートの後半部分はほぼフェイスムーブです。僕はクラックよりもフェースの方が得意なので、前半のクラックセクションさえ抜ければ後半はなんとかなると考えていました。最後の一手が足の深いデッドポイントで、ちょっと不安だったけど、まあ、ここまでくれば気合でとめられるでしょ、とか思ってました。

アサコさんがレストしながら登れるような前半のクラックセクションを、僕は必死に登り、なんとか落ちずにハンドジャムのレストポイントに到達。ここからがこのルートの見せ場ポイントのランナウトトラバースです。
トラバース基部にプロテクションを固め取りして、トラバースしてからのリップへの最後のデッド!で落ちた…。

リップデッド前にカムを取ったけど、指と競合して甘くしか入れられず、落ちた時に外れて、トラバース基部のプロテクションで止まりました。
いい加減なカムセットと、いい加減なムーブに対し大反省。やってはいけない落ち方をしてしまい申し訳ありませんでした。人生最大級のフォールでしたが、幸い、どこにも触れることもなく無事でした。

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すでに終了モードのコミネッチさんとアサコさんと一緒にお城見学に行きましたが、頭の中は「chemin de Fer(E5)」のことでいっぱいです。
最後のムーブをより安定させるための追及をしなかったことや止まらないカムで突っ込んでしまったことへの自己嫌悪と、「そんなことより次の1本に集中しないと」と自分に言い聞かせるのとで、お城見学どころではありません。

なんとか表面上は冷静を保ちつつ(保ててなかったかも知れないけど)、最終トライ開始。
1便目のヨレもあって前半のクラックは超落ちそうでした。便数を重ねたことによる洗練度合いがヨレをなんとか上回り、レストポイントに到達。今回は指を少し妥協してカムをきちんときめて、最終ムーブも新たな安定ムーブでこなし、無事に完登。
ふー、よかったぁ。
岩の上からの海は一際輝いて見えました。

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これがDumbarton一番の思い出ですが、ボルダリンもやりました。

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グラスゴーから車で30分程度の場所でアプローチもほとんどゼロなので、夕方からは地元のボルダラーで賑わっていました。
僕も少し混ぜてもらって「Slap Happy(7a)」という人気課題を登りました。他にも魅力的な課題がたくさんあって、時間があればトライしたかったのですが、今回は断念。

あとは「Long Bow(E1)」から岩場頂上まで登ったり、クラカミさんの10mフォールを止めたり、犬と遊んだり、と盛りだくさんでした。

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頂上での記念撮影。
ここから懸垂するとRequiemを見学できます。

宿では、毎晩、尺八の品評会が開催されました。

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岩場では尺八のBGMが流れていました。

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今回のメンバーは、少し話したことがある程度の間柄でしたが、毎日楽しい時間を過ごす事ができました。何より、3人とも僕より経験も実力もあるクライマーなので、一緒に登ることで学ぶことや刺激になることがたくさんあって楽しかったです。

日本でもまた登りましょう!
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「守り抜いた医の灯」を読んだ

半年ぐらい前の話。
ベルファストに留学するにあたり、色々と情報を集めている時に、とあるブログに遭遇した。
Queen's University Belfast (今、僕がいる大学)で博士号取得を目指している日本の放射線科医のブログだった。
About a half year ago, I found a blog written by Japanese PhD student in QUB.

さっそくブログ著者のF先生に「僕も行くからよろしくー」とメッセージを送ったのだけど、過去のブログ記事を読んでいくうちに、なんだか凄い人だってことがわかってきた。まあ、海外の大学院に行くぐらいだから並では無いモチベーションと能力を持っていることは十分予測できたけど、実は並では無いどころか、日本を代表する研究者になるような人な気がしてきた。
(ちなみに僕は日本の大学院に所属しながら1年だけ海外で勉強する形なので、F先生のように海外の大学院で博士号を取得するのとは難易度も覚悟も雲泥の差です)
I sent a mesage to him like that; Hi! I'll go Belfast to study in QUB. I look forward to seeing you!

さて、実際にベルファストでF先生にお会いすると、とても気さくな方で、同年代という事もありすぐに打ち解けることができた。研究以外でも様々な方面への造詣が深く、話していて楽しい人だった。小学生の時は野球選手(ピッチャー)として全国大会で活躍、中学では三段跳びで全国大会出場という、元ガチアスリートっていうのも素晴らしい。
Soon after I met him in person, I get along with him.

そして、そんなF先生は「守り抜いた医の灯」という本を書かれている。そのことを僕は知っていたので「読みたいです!」と頼んだら、快くプレゼントしてくださった。
それが下の本。
で、読んでみて驚くことがたくさんあった。
The book shown below was written by him.



※以下は、本の内容とF先生との会話から、僕が適当に思ったことを書いているだけなので、F先生のお考えと異なる部分や、事実とは異なる部分も多々あると思います。ただ「僕がそう感じた」と言う風に解釈して読んでいただけると幸いです。

F先生は、医学部を卒業した後、福島県の病院で研修医生活を送った。
その病院は、震災で甚大な被害を受けた地域にありながら、なんとか病院としての機能を維持することができた「奇跡」の病院だ。
F先生は、「奇跡の病院の秘密」を探るために病院初の研修医として赴任した。その「秘密」がこの本に書かれている。
He spent several years as a resident doctor in a small hospital in Fkushima prefecture after the devastating earthquake hit the city. This book is focusing on how the hospital kept its functions during the disaster period..

ところで、そういう理由で研修病院を選択するとかあるの?
どう考えても「イバラの道」と言うか、道も無い「イバラの藪漕ぎ」で、それを突破したからと言って見返りがあるかどうかも全くわからないのに、そこに突入できる力はすごい。

原発に近い病院だったので、放射線に関する問題も多く浮上する。
そんな中、F先生は100ミリシーベルトを境に安全かそうでないかを決定することに疑問を持った。人によって放射線への感受性は異なるはずだから、1つの値で線を引くのはおかしいのではないか?
そこでF先生は、福島の被爆をより正しく評価したいと考え、放射線の研究者になることを決意。放射線研究の最前線であるQueen's University Belfastの大学院に入学した。
The hospital is located near the nuclear power plant destroied by Tsunami attack. He thought that each individual has different sensetivity to radiation and it is necessary to define new criterian of radiational insults. So he made up his mind to be a researcher and left Japan.

いやいや、普通だったら「もっと研究されるべきだよねー」ぐらいの考えで終わるでしょ。
ところがF先生は、その分野で最も高名な研究室に単身飛び込んだ。大学院生としてそこで3年間過ごす事は、人脈などを含めてかなり強力な武器を手に入れることになる。そして将来は放射線の歴史を塗り替えるような研究をし、人類に大きな利益をもたらすことにだろう。
自分がやりたいことをこれだけ明確にし、それもモチベーションが純粋に他者の為っていうのがすごい。
As he has a specific dream, he can work so actively. I learned a lot from the book and conversation.

僕も「自分の信じた道を進みたい」と思っているが、そのモチベーションはほぼ「自分の幸せ」だ。
自分の幸せを追求した結果それが社会貢献になるのであればとても良い生き方だな、って言うのが僕の基本コンセプトだけど、F先生の前では恥ずかしくてそんなことは言えない。

という事で、感動したので本にサインを書いてもらいました。

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この本は「書かれたエピソードを多くの人に知ってほしいから印税は貰わずに価格を安くした」らしいです。
そんな風に考えるんだなあ。
皆さんもぜひ読んでみて下さい。医療従事者でなくても十分理解できる内容です。

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F先生、今後の活躍を期待しております!
I am hopeing for his success!


Belfast City Marathon で初マラソンに挑戦した

数年前から漠然とサブスリー(フルマラソンを3時間以内で完走すること)に憧れていた。憧れというよりは、アルパインクライマーならそのぐらいの体力が最低ラインなのではないか、と感じていた。

3ヶ月前にベルファストに来たてみたらトレーニング環境が充実していたので、日常的に走るようになった。
目標が欲しくなって調べてみると2ヶ月後にBelfast City Marathonと言うでっかい大会があることがわかった。ベルファストにおける東京マラソンみたいなものだけど、幸い抽選とかは無かったので、勢いで申し込んでしまった。

初マラソンでサブスリーを狙うつもりはなかったけど、ウェブ情報に従ってトレーニングを進めるうちに「自分はサブスリー圏内にいるのではなかろうか」と思い始めた。10kmを37分台で走りまだ余裕があったことで、「サブスリーを狙える」と確信した。

そして、今日が当日。

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調整方法もよくわからないまま当日を迎えた。回復のため、この1週間はまともに走っていないからすごく不安だ。
初マラソンなので荷物の預け方とか、シャトルバスとか、スタートラインの並び方とか、水の取り方捨て方とか、色々不安はあったものの、なんとかスタートすることができた。

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気温は7℃。僕は長袖シャツを選択したが、周囲はほぼランニング用のタンクトップだ。ますます不安になる。
とりあえず、3時間のペースメーカーにピッタリ付いていく。
作戦としては、ハーフまではペースメーカーに付いて、そこから少しずつ上げ、最後は苦しいだろうけど気合いでねじ伏せて3時間を切る。

10キロぐらい走って、給水。まだあまり給水する人が居らず、道に捨てていいものかよくわからない。念のため、ゴミ箱の近くで応援していた人に「捨てといて下さい」とか頼んだ(その後は、もう何もかも道に捨てまくった)。

当然だが、ペースメーカー付近は多くの人が走っている。
僕は4’15/kmでは殆ど息は切れないが、周囲にはけっこう苦しそうなランナーもいる。

「まだまだ余裕だ。このまま普通に走り切れそうだな。」

20キロまではそう思っていた。
様子が変わってきたのはハーフを超えてから。
今回のコースはアップダウンがそれなりにある。長い登りに差し掛かった時、僕は少しペースを落としたかった。だけどペースメーカーは(当然)そのままのペースで進んでいく。周りの選手も付いていく。しょうがないから僕も付いていく。

登りが長い。脚が重い。ねえ、ペース落としませんか?とか言いたくなる。
そんなことはできないので、黙々と付いていく。

と、今度は練習中にも何度か経験した脚(股関節)の痛みが襲ってきた。これはけっこうやばいヤツで、練習中にこれに見舞われたら即終了していた。
今回のレースで1番心配していたのがこの脚痛なので、NSAIDsを準備してきた。すかさず一錠内服。
しばらく我慢していたら、徐々に楽になった。反動が怖いー、とか思いつつペースメーカーに付いていく。

しかし、痛みのせいなのか、疲労のせいなのか、次の上り坂でついていけなくなった。
周りの選手はハーハー言いながらも、力強く登っていく。僕は心肺機能は余裕なのに、脚がどうしても動かなくなってしまった。
まあ、いい。下りになったら追い付こう。
こうしてズルリズルリと集団から離れ始めた。
ここからが地獄だ。
追いつくはずの下りでもスピードは上がらず、3時間集団は視界から消えていった。
たくさんのランナーに抜かれた。おじいさんにも女の子にも抜かれた。
悔しかった。
悔しかったけど、どうしても脚が動かない。

普段の練習では、僕より速いペースで練習しているランナーには殆ど遭遇しない。僕は3’40/kmで軽快に飛ばし、前にランナーが見えればここぞとばかりにスピードを上げて抜かし、優越感に浸っていた。LSDとかバカにしていた。そんなのこの10年間の山登りで十分同じ効果を得られている、なんて勘違いしていた。

それが今、5’00/kmに抜かされる。
抜き際に「頑張れよ」なんて声をかけてくれるランナーも多い。

…息があがって辛そうじゃん。僕は全然疲れてないよ。簡単に抜き返せるさ…

でも何もできない。ただ、徐々に離れていく背中を睨み付けるだけ。
自分の脚にイラついた。
息を切らして走りたい!練習の時みたいに大汗かいて、心臓バクバクさせて、死ぬんじゃないかってぐらい走りたい!
沿道の応援もウザかった。

…違うんだ、違うんだ、本当はもっと速く走れるんだ…

残り5キロ。
スパートをかけるランナーにどんどん抜かされる。
僕はもう、走っているのか歩いているのかよくわからない。

残り1.6キロ。
もう100回ぐらい立ち止まりそうになった。

ゴールが見えた。
最後の力を振り絞ってダッシュする選手たち。
僕はもう、そんなことはできない。未だに脚を動かし続けているのが奇跡だ。

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周囲の選手が笑顔で駆け抜ける中、2m前から歩き、顔を歪め、足を引きずりゴール。
一歩も歩けず、スタッフに誘導されながら脇の邪魔にならないところに倒れる。
脚全体が攣りそうで、どこの筋肉をどうすることもできない。
立ち上がると、NSAIDsが切れたのか、アドレナリンが切れたのか、痛くて歩けない。走っていた時は意識していなかったところもあちこち痛い。極度の筋疲労で痛いのか、関節とか腱とかが痛いのか、もうよくわからない。
とにかく歩けない。
NSAIDsを1錠追加し、なんとか荷物を回収してシャトルバスへ。

走り終わったら、肉でも食べながら美味しい酒を飲もう!

4時間前まではそう考えていた。
でも、もう、そんなことはどうでもいい。早く部屋に戻ってベッドに寝転がりたい。
ああ、なんて弱いんだろう。
(ま、シャワー浴びてちょっ休んだら、気力湧いてきて、普通に呑みにいったけどね)

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さて、僕のフルマラソンに対する認識は完全に間違っていた。
初めての経験だったので、レース展開、調整方法、レース中の補給方法とか、色々と改善点は有ると思う。
ただ、そういう問題では無く、完全なる実力不足を痛感した。

記録は3時間12分台だと思う。
これを「惜しい」と言う人もいるかも知れないが、僕の感覚では「遥か及ばず」といった感じ。ここからサブスリーまでは3段階ぐらいの小さな目標設定が必要になる気がする。
とにかく長距離のロードに耐える脚が無い!自分の脚がこんなに貧弱だったなんて。山での使い方とは違うのだろう。スピード練習は心肺に負荷がかかり「頑張った気分」にはなるが、地道な距離練習を疎かにしてしまった。エンジンばかり鍛えても、搭載するボディが僕には無かった。

今日のレースは非常に苦しく、また自分に対するストレスを感じるものだった。
だけど、出場して良かった。早い段階で、自分の弱点を見つけることができたのだから。
ロードレースを主軸にするつもりはないが、トレラン、また全ての山の基礎として、これからも走り続けよう。




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