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富士山の救護所でボランティア

先週の木曜日から土曜日まで富士山吉田口七合目救護所で過ごしました。
山の診療所で働くのは初めてでしたが、とても楽しく充実した時間を過ごすことができました。
僕たちは医師(僕)と医学生と看護学生の合計3名で3日間働きました。多くのリスクの伴う山中、毎日何百人が通過する診療所で医師が1人というのは、正直、不安でしたが、多くのことを学び、気が付くきっかけとなりました。



七合目救護所は千葉大医学部が学生主体で運営しており、僕はお手伝いというような位置付けなので、救護所の詳細や内情はわかりません。それでも僕が気が付いたことをいくつか書きます。

まず「救護所の医師や看護師は無償で24時間体制で働いている」ということ。
場所によって異なるかもしれませんが、多くの山岳診療所は無料で受診することができ、本来は処方箋無しでは貰えないような薬をタダで貰えます。24時間いつでも受診可能で、場合によっては往診に応じ、さらに救助活動までしてくれることもあります。これらをごく少数のスタッフが行うのです。
これに対しては色々な意見があると思いますが、受診を希望する方にもその事実は知っておいてもらいたいです。
僕自身も、山岳診療所で働く多くの医療従事者に対して改めて尊敬の念を抱きました。

次に「登山者を守ろうとしている人たちがいる」ということ。
これも富士山が特殊なんだとは思うけど、さすがにこれは注意すべきなのでは?という装備(なんとなく想像つくでしょ)や行動(缶ビール飲みながらとか)の登山者が散見されました。
こういう人が行動不能に陥った場合、結局、救護所や山小屋スタッフ、ガイド等が面倒を見ることになります。
これまでは山岳指導所的な場所は、どちらかというと「お節介」「自己責任でいいじゃん」という個人的意見でしたが、今は「よろしくね」「やばそうな人は止めてね」というような意見に変わりました。
また、今回はインスリン使用中の糖尿病患者(外国人)が血糖コントロールがうまくいかなかった症例を診る機会がありました(深夜)。片言の英語どうしでのコミュニケーションなので詳細は把握できませんでしたが、どれぐらいの覚悟と準備をして富士山に挑んだのか。(この患者パーティーは「誰か1人は患者に付き添って下さい」というお願いに対し「頂上で御来光が見たい」という理由で置いていこうとし、「翌朝、もう一度様子を診るからそれまで小屋で休んでいるように」と指示したにも関わらず「勝手に下山しました」と小屋から連絡がありました)
装備の問題、行動の問題、健康状態の問題。
こういったことに関しても賛否両論あると思いますが、登山者側としてではなく、登山者を守ろうとする側の考え方に触れることができたと言うことです。

最後に「山岳診療所は山岳経験豊富な医療従事者が望ましい」ということ。
今回一緒に過ごした医学生と看護学生は2人とも山は初心者でした。そして、ここの救護所で働く医師も必ずしも山に慣れているとは限りません(僕は例外です)。
救護所を訪れる患者の多くは高所に関連する疾患です。高山病に関する知識は教科書に書いてあるけど、それを読んだところで山での実体験には劣ると言わざるを得ません。
また、多くの患者は疲労し、無事に下山できるか(稀に登頂できるか)不安に感じています。そんな時に適切に栄養補給させ、装備を装着させ、場合によっては歩きやすいようにパッキングをし直すことは、山岳経験豊富な人でないとできません。
実際に、今回の救護所でも、薬剤の処方よりも、登山アドバイス的な意味での貢献の方が大きかったように思います。
山の素人は診療所で働くな、と言うつもりは一切ありません。
山が得意な医療従事者は是非とも診療所で働いて下さい、と言いたいのです。

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僕はこれまで登山者として山と関わってきましたが、今回は山なんてほとんど登ったことが無い人たちと過ごし、少し客観的に登山者の姿を見ることができたような気がします。
また、こういう小さな救護所にも誇り高き文化、伝統があることを知ったことも大きな収穫です。
機会があれば、また七合目救護所で働きたいし、他の山岳診療所でも働いてみたいです。

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上ノ廊下で誕生日

黒部川上ノ廊下で32歳の誕生日を迎えました。
誕生日コメントを下さった方、ありがとうございました!
(遡行の様子は後日、「尾根の向こう」にUPします)

上ノ廊下はこれまで体験してきたような登攀中心の沢とは全く異なり、ひたすら水と戯れる沢でした。沢というより川でした。
おそらく水量はかなり少なく、水温も高かったので、全く困難さを感じることもなく純粋に楽しく遡行できました。

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2日分の行程を1日でこなせたので、あとは焚火と岩魚と酒の日々です。

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そんな中、仲間が握った岩魚寿司で誕生日を祝ってくれました。

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最高に贅沢な時間だなぁ。
どんな高い金を出したって、大自然の中で素敵な仲間と一緒に過ごす時間は買うことはできません。
幸せを噛みしめながら源流行ったり、赤木沢行ったりしました。

赤木沢は2回目だったけどやっぱり素晴らし。
今回は黒部湖から歩いたので、最上部に隠された宝石のような赤木沢の魅力を最大限に感じることができました。

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つめも天空に登るような、それでいて牧歌的。

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星を眺めながら考えたこと。
今はまだ日本での山岳医の存在意義はあまり無いですが、将来は山岳医であることを誇れるようになりたい。そこまでの道のりは遥か長いけど、32歳の僕は精一杯もがきます。おじいさんになった時、「32歳が山岳医としての分岐点だったなぁ」と思えるような、そんな32歳を過ごしたいです。
おらっちガンバ!

両親と槍ヶ岳に登った、ついでに小槍も

週末は両親と槍ヶ岳に登りました。ついでに小槍にも登ってきました。



初日はババ平でキャンプ。両親をテントに寝かせ、僕はゴロ寝。星が素晴らしい。

翌日は朝から快晴。暑い!
両親(特に父)はバテるくせに急ぎたがるから、僕が先頭に立ちペースを厳格にコントロール。
そしたら数人の登山者から、

「ガイドさんのペースメーカーで凄く歩きやすかったです。ありがとうございました。」

って言われた。ガイドでも無いし、あなたのペースメーカーでも無いけど、悪い気はしない。

「お仕事は北アルプスが中心ですか?」

とか聞かれたからね。完全にガイドとクライアントって構図だったみたい。

肩に到着した時点で父は穂先の登頂を断念。
母はトライする、と。
一応ハーネスを装着してなるべく安全を確保するように工夫しつつ登った。
登りはサクサク。無事に登頂しました!

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僕は4回目の登頂。
1回目は夏の槍穂縦走。
2回目は春の北鎌尾根。
3回目は冬の横尾尾根。
そして4回目は母親を連れて。

槍ヶ岳はいつも僕の成長と共にあるように感じています。
5回目はどうやって登ろうか、ワクワクは止まらない!

穂先からの下りた後は、チッペと小槍にトライ。
情報は少なくてよく分からなかったけど、何とかなるっしょ、って感じで適当にアプローチ。
思ったより踏み跡は明確でそんなに悪くない。
取り付きも明確。あとは残置がいっぱいあるのでお好きなラインをどうぞって感じです。

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45mぐらいなので1ピッチで登れるけど、ライン取りによっては2ピッチの方が快適でしょう。
フェイスは硬くて快適。Ⅴ級と言うよりは5.8って雰囲気。
ただし頂上は浮き浮きロックンロールなのでアルプス一万尺を踊る時は要注意。
そして、周囲の視線が物凄いことになるので要注意。拍手とかされます。

そして、夕方テラスで飲んでたらクライマーと出会い、何となく世間話していて、

「どこかの山岳会とかですか?」
「同人青鬼ってのがあって…」
「青鬼!あの変態の!いつも記録読んでます!」

ということで山梨の岳心山岳会の方々の席に混ぜてもらいました。
医療従事者も多く、楽しく有意義な時間を過ごせました。
まさか槍ヶ岳で「クライミングは保持力だ!」なんて会話をするとは思ってもいなかったです。
岳心山岳会の方々、これからも宜しくお願いします!

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下山日も快晴!

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20kg以上を背負って明神から上高地までダッシュ。
梓川で水浴びして終了。
夏だね、夏!

前穂高岳が好き

僕は前穂高岳が好きです。
標高では奥穂高に劣るものの山容では前穂高が圧勝でしょう。明神岳からの南側の尾根、奥穂からの釣り尾根、屏風岩からの北尾根、これら3つの特徴的な尾根が合わさり頂点を形成するのが前穂高です。どの尾根が登っても素晴らしい。

僕が登山を始めたのは10年前の涸沢です。
10月の3連休、紅葉を見て奥穂高まで登るつもりでしたが、涸沢で吹雪につかまり横尾に逃げ帰ってきました。
翌朝、雲の隙間の雪化粧した山肌が神秘的で、涸沢の紅葉よりも深く印象に残っています。その時は山の名前もわからず、ただただ岩の険しさと美しさに感動したものです。

それが氷壁の舞台となった前穂東壁だと知ったのは翌年の夏でした。
すっかり山にのめりこんだ僕は槍穂高の縦走に挑戦し、そのフィナーレとなる前穂高から梓川を見下ろし、大冒険の成功を喜びました。

次に前穂高を訪れたのは大学の合宿で登った前穂北尾根です。
マルチピッチクライミングを覚えたばかりで、学校で練習したロープワークを山で実践できるのが嬉しくて仕方ありませんでした。

その後も何回か登頂していますが、印象に残っているのは屏風岩雲稜ルートから前穂北尾根に継続し、さらに明神につなげた登山です。56コルでのビバークは屏風岩を超えてきた充実感と空中に浮いているような高度感が相まってとても愉快なものでした。

先日、急に2日の暇ができたので思い立って1人で前穂高に登ってきました。夜行バスで新宿を出発し5時に上高地到着。
平日なので人も少なくサルの赤ちゃんが迎えてくれました。



明神を眺めながらのお散歩は何度やっても最高ですね。

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雪渓を歩く装備は持ってこなかったので、涸沢経由ではなく、水を5リットル汲んでパノラマコースを通って屏風のコルから前穂北尾根8峰にとりつきました。

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藪を漕いだりガレ場を登ったり大量の虫と戯れたりしながら56コルに到着。13時までに着けなければここでビバークのつもりだったけど、まだ12時過ぎなので前穂頂上まで行くことにしました。

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フリーソロでほどよい緊張感を楽しみながら快適に登り、前穂高岳頂上到着。今夜はここで寝ることにしました。

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午後になって雲が湧き始めたけど、そんな景色も高山ならでは。槍とか笠とか常念とか、遠くを見れば南アに富士山。持ってきたウイスキーをちびちびやりながらツェルトも張らずに寝転がります。
夜中に風が強まり慌ててツェルトにくるまる。朝には3000mの頂上らしい強風になって暴れるツェルトの中でお湯を沸かすのも一苦労。4時に前穂山頂を出発し、奥穂経由で西穂高へ。奥穂西穂は初めて歩いたけど、これ登山道って言っちゃだめでしょ。そりゃあ事故も多発しますよ(シーズン前で浮石が多かったのでしょうか)。
昼過ぎに新穂高温泉に下山。
今回もとても気持ちの良い前穂高岳でした。

次は厳冬期の前穂に行きたいなあ。
きっと綺麗なんだろうなあ。
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