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Fairheadでクライミングした

Dumbartonでのクライミングから引き続き、コミネッチさんとFairheadでクライミングを楽しみました。



Fairheadは北アイルランドのシークリフで、一番高い所で100m近くあります。
基本的には垂壁で、柱状節理が崩壊することによるハングやレッジが随所に見られます。
柱状節理の権化みたいな巨大な岩柱(幅5m、高さ80mぐらい)の間をチムニーで登るルートがあるかと思えば、のっぺりしたフェイスのひびにナッツをきめながらランナウトするルートもあります。当然、ボルトはありません。

アプローチは雲ノ平のような草原を10分ほど歩きます。
この草原の向こうに海があるなんて信じられないのですが、「そろそろ芝生の縁だな」という予感は全くないまま、急に地面が消えて空中になります。夜とか霧とかだと、本当に危険です。

あと、牛が巨大です。

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エメラルドグリーンの芝生に転がるボルダーを支点に100mロープをFIXして懸垂で降りるのがFairheadのスタイルです。
歩いてアプローチもできますが、時間もかかるしアプローチシューズの回収なんかも考える必要があります。なので、上の芝生で登攀準備をして、シューズをはいて、懸垂して、リード&フォローで芝生に戻ってくるっていうのが最もスマートです。

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上の写真は最も柱状節理が発達しているエリアにある「An BealachRunda」(E1)です。
おそらく世界中でここでしかできないんじゃないかっていうような登攀体験ができるルートです。だって上の岩柱って壁本体から離れていて、柱の周りを一周できちゃうんだよ。この岩はどうやってここに浮いているのか理解できません。

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上の写真は、逆に節理が発達していないエリアにある「Face Value」(E4)です。ルート名の通り、クラック指数は低く、ほぼフェイスです。僕が担当した2ピッチ目には写真のようなハングもあって、スポーティーなクライミングを(ナチュプロで)楽しめます。

この一週間のベース基地は我が家でした。

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我が家と言っても大学の寮なので、人を泊める環境では全くないのですが、コミネッチさんは快適そうに暮らしていました。

初めてFairheadを訪れた日のこと。
駐車場で準備をしていると、薄汚い(クライマーっぽい)老人が「わかんないことあったら教えるよ」と話しかけてきました。
ありがたくアプローチのことや懸垂のことなんかを教えてもらったのですが、実はこの老人はMr.Calvin Torransという大クライマーでした。

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76歳のCalvinさんは、50年間にわたりFairheadで登り続け、膨大なルートを拓いたクライマーです。
E3ぐらいまでの星付きルートはほとんどCalvinさんが初登です。トポのHistry部分の著者でもあります。

その後もロープを借りたり、お茶やケーキをごちそうになったり(彼のバンの中で!)と、大変お世話になりました。
トポの写真にサインを貰って、フェイスブックにアップしたら、すぐに多くのクライマーから反応があったことからも彼の人気が伺えます。

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長年にわたり夫婦で世界中を旅しながらクライミングを続け、多くのクライマーから親しまれている老夫婦が輝いて見えました。ちなみに子供は3人いて、「クライマーじゃないのか?」と聞いたら「そうしたかったけどね」とのこと。

さて、今回の旅のハイライトは何と言ってもコミネッチさんの「Below and Behold」(E7)のトライです。
下の写真の凹角を登り、いきどまりのハングを右に抜けて再度凹角に入り、次のハングは下を左にトラバースします。トラバース終了後は、垂壁を少し登り、そこからなんと2mの横っ飛びランジ!その後は垂壁を終了点まで登る65mのロングルートです。

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YouTubeにアップされている、初登者のRicky Bellのランジでのロングフォールシーンは有名です。
ハングしたトラバースの左はじのナッツが最終プロテクションで、そこから数メートル登ってからの2mランジなので、フォールの距離と振られは半端ないです。
コミネッチさんはFIXロープにぶら下がって練習をした後も、リードするかどうかずっと迷っていました。

「危険」と「恐怖」を混同してはいけません。
「危険」は避けるべきもので「恐怖」は乗り越えるべきものです。

コミネッチさんのリードトライは、とても勇気のいるものでしたが、見事「恐怖」を乗り越えました。
残念ながら完登はできませんでしたが、UKトラッドとアルパインクライミングに共通する面白さも垣間見ることができました。
2週間の間に10mフォールを2回止めることになるとは思ってもいませんでしたが…。

週末にはFairhead Climbers Meetingが開催されました。

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これと言って大したイベントは無いけど、クライマーが集まって、ワイワイ登る感じです。
夜はゲストスピーカーのプレゼンがあるのと、会場となっている農場のオーナーがビールとハンバーガーを売っていました。
日本とは時間の感覚が全く異なり、プレゼン開始は23時過ぎ、終了は24時過ぎでした。

そして、朝も遅い。僕たちは9時半頃に岩場に着いて「出遅れたかも」と思っても、たいてい一番乗りです。
昼ぐらいからちらほらクライマーが現れます。きっとみんな明け方まで呑んでいるのでしょう。

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上の写真がキャンプサイト全景です。
僕たちはテントが無いのでキャンプはできませんでしたが、こんな環境でクライマーしかいなかったら、そりゃあ呑むよな、って感じです。

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この2週間、DumbartonとFairheadで登りましたが、なんとなくEグレードの雰囲気もつかめてきました。
僕はE3のオンサイトとE5のレッドポイントが最高でしたが、レッドポイントに関しては日本のクライミングとそんなに大きな差は感じません。
UKトラッドの神髄はオンサイトトライにあると思います。E3は5.11-ぐらいなので、ボルトルートであればオンサイトできて当然のグレードです。もしくはクラックルートであればいつでもプロテクションがとれるのでそれほどプレッシャーはありません。
しかし、UKトラッドではフェイスでもスラブでもナチュプロなので、オンサイトでとりつくには覚悟が必要です。
今回オンサイトしたE3も、ハング下の120cm伸ばしたカムを最後にハングを超えなければならず、気合が入りました。

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また、HVSなどの簡単なグレードでも危険が伴うことを感じました。
これは5.9とかなので、普段ならピクニック気分で登れるグレードです。ところが、取れる所できちんとプロテクションをとらないととんでもないランナウトを強いられるし、かといって取りすぎると玉切れのリスクもあります。支点構築のことも考えなければなりません。
それと、ワイドはやっぱり難しいです。どこの国に行っても5.10のワイドに苦しめられますね。
という事で、グレードの低いルートでもそれなりの充実感を味わえるのがUKトラッドの特徴だと感じました。

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僕は仕事をしながらだったので、十分付き合う事ができず申し訳ありませんでしたが、コミネッチさんとの生活もとても楽しかったです。

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僕の留学は今年いっぱいだけど、Fairhead meatingの時期にはまたこの地を訪れたいと思います。
日本からは遠い岩場だけど、訪れる価値は絶対にあります。
キャンプ道具を持って、わいわい行くのも楽しそう!今度は日本から遠征隊を組んで行きましょう!
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