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黄連谷右俣を駆け抜ける

黄連谷右俣は時期が早すぎると凍らず、遅すぎると雪で埋まるため、気持ちよく登れるチャンスは少ない。
近年は温暖化の影響で、凍るのが遅くなり、ますます登りにくいルートとなっている。

で、だ。
そういう気持ちで天気予報を追っていると、めったに訪れない黄連谷右俣をノーストレスで登れるThe Dayが土曜日にやってくることに気が付いた。
これは行くしかない!

15日(土)0時過ぎ、自宅発。
2時30分、尾白川駐車場
2時45分、歩行開始。
6時30分、五合目

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徐々に明けつつある空が甲斐駒頂上付近に反射し始める。
明るくなるのを待つか迷ったけど、どうせ適当に下るだけなのでヘッデンでアプローチ開始。

五丈沢右岸側の適当な支沢を下降し、左岸よりへトラバースしつつ下る感じ。テープなどは見つけられなかった。
8時頃、谷底着。

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坊主の滝は凍っている。これはいい!
ロープは出さずに登攀開始。
上部が薄くて、ちょっと気持ち悪かったので、僕がフリーソロで抜けた後、そのセクションだけ上からチッペを確保。

そして、いよいよ氷の回廊のスタート!

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前爪だけでどんどん駆け上がる。
平らな場所があると、ほっとふくらはぎを休ませて、また前爪で駆け上がる。

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先行パーティーも抜いて、本日の先頭を行かせてもらいました。

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やっぱり今日は最高だー!
なんて思いながら登ると、すぐに氷パートは終了。
あとはひたすら詰めあがる。

右股は初めてだったのでよくわからず、いつの間にか左岸の尾根上にいたので、そのまま尾根を登ることに。
見下ろす右股本流は完全に雪崩地形。こりゃあ、雪崩事故も起きるわけだ。早めに尾根に上がっちゃって正解な気がする。

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尾根はハイマツとシャクナゲの藪がうざくて難儀。
ところどころ垂直近い木登りもあって、パーティーによってはロープを出すことになると思う。
後続の皆さん、変なトレースつけちゃってすみません。
でも、これはこれで楽しめた。

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一歩ずつ視界が広がっていく、頂上直下の高揚感はたまらない!
14時頃、頂上着。

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夕飯までに小屋に辿りつける自信が無かったので、素泊まりで申し込んだけど、この時間なら夕飯にありつけそう。
となれば、急いで降りよう!

15時過ぎ、七丈小屋着。
無事に夕飯をいただくことができました。最高。

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ぐっすり眠って、日曜日は素晴らしい朝焼けの中、下山しました。

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温泉入って、Dillでランチして、午後は小淵沢で山岳医のミーティング。
夕飯食べて、渋滞もなく20時半帰宅。
なんか、全てがうまくいった週末でした。
気持ちよかった!
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今日も甲斐駒ヶ岳で山岳医療パトロール

また七丈小屋まで来ました。

最近、よく考えるのは「理想の山岳医療って何だろう」ってこと。
遭難者が出ないのが一番重要です。そのために最も良い方法は人が山に登らない事。それが言い過ぎなら、「身の丈に合った登山をすること」。これなら大勢の人の賛同を得られそうです。

だけど、僕の意見は少し違います。
(正しい方向性の覚悟があるならば)山は「挑戦の場」であっていいはずです。
それを支えるのが山岳医療の1つの側面だと思います。
遭難事故の減少に直結する活動も重要だし、日本の山岳文化向上に寄与するような息の長い活動も重要でしょう。

できることから一歩ずつ。30年後の世界を想像しながら。


山岳医療パトロール2018に向けて

日本登山医学会公認 山岳医療パトロールの準備で七丈小屋まで医薬品等を荷揚げしました。



日本登山医学会が山岳医を認定するようになって約10年経ちますが、未だに山岳医がどのように社会貢献できるのかはよくわかりません。ただ、はっきりしていることは「山での事故を減らしたい」と言う気持ちを全ての山岳医が持っているということ。

そのために何をするべきなのか?
これは僕が一生をかけて取り組む課題です。

賛否両論ある中、昨年から山岳医療パトロールを開始しました。
昨年度の報告書の中に「今後の展望」を書かせてもらったのでこのブログにも引用致します。

―――以下、2017年度山岳医療パトロール報告書「今後の展望」より引用―――

初めての試みである「山岳医療パトロール」は、多くの方のご理解とご協力により実現させることができました。振り返ってみると、計画段階から様々な問題を抱えておりました。予算のこと、場所のこと、医療資機材のこと、安全管理のこと、そもそも学会の活動として認められるのか…。これらの問題を全てクリアできたわけではありませんが、運用小委員会のメンバーを中心に、学会関係者、花谷山岳ガイド、北杜市、地元の方々など、実に大勢の方に助けていただき、なんとか大きな事故も無く2017年度の活動を終えることができました。
(中略)
 日本の山岳医療体制は十分整っているとは言えません。山岳診療所の数は登山者数と比べて少なく、山中で起こった事故に対して適切なタイミングで医療介入を行う事が困難です。この問題を打開する道筋は色々考えられます。そのうちの1つが「山岳医療パトロール」です。歩きながら声掛けすることで受診するほどでは無いが医学的な相談をしたい登山者と話をすることができ、事故の予防に繋がるかも知れません。また事故が発生した場合、傷病者のもとに駆け付けることで救命率を上げられるかも知れません。山中でアンケート調査を行う事でこれまでわからなかった登山者が抱える医学的問題が明らかになるかも知れません。毎晩、山小屋で行うミニレクチャーを通して、登山医学の普及に役立てるかも知れません。
「山岳医療パトロール」にどのようなメリットがあるかを明らかにするのはこれからの課題です。地道に活動を続けることで「山岳医療パトロール」の本当の意義が見えてくると信じています。今はまだごく小規模の活動ですが、将来的には各山岳診療所の間をパトロールで繋いで、山域まるごと医療ネットワーク化しようなどと言う構想もあります。何年後、何十年後のことかわかりませんが、「日本は山岳医療が充実しているから安心して登山ができる」と世界中の登山愛好者が日本の山を楽しむ日が来ることを夢見ています。
 批判的な意見も私たちの耳に届いています。その多くは私たちの活動について真剣に考えてくれているからこそ出てくるものだと感じています。そう言った意見に真摯に耳を傾けながら活動を充実させるよう努力します。「山岳医療パトロール」の発展は「登山医学の進歩普及」と言う日本登山医学会の理念に基づいています。理念を実現する多くの道筋の中の1つが「山岳医療パトロール」です。日本登山医学会の目指す理念のもとに、学会における他の活動とも連携・協力しながら「山岳医療パトロール」の発展を目指したいと考えています。
 繰り返しになりますが、「山岳医療パトロール」は多くの方のお力添えによりスタートすることができました。まだまだ問題山積ですが、少しでも山の安全に貢献できるよう努力して参りますので今後ともご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

―――引用終わり―――

悪天予報の為、宿泊予定者はほとんどキャンセル。静かで濃厚な夜を過ごしました。

下山後は甲斐駒ヶ岳山岳資料館へ。

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ワイナリーに併設された小さな資料館だけど、甲斐駒に関する資料は超充実。
特に恩田善雄の「覚え書き」は資料としても読み物としても面白い。何とか手元に置いておく方法は無いだろうか・・・。

ランチはBISTRO TOMATE(ビストロ トマテ)へ。
実はこの店、花谷さんの御両親と弟さんのお店。

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短パンサンダルでは入りにくい雰囲気の洒落た店です。
昼からコース料理があって、僕は「甲斐駒ヶ岳」(2800円)を注文。その上は「富士山」(3500円だったかな)があります。標高と値段の関係が気になりますね。夜のコースはキリマンジャロ(5500円)とエベレスト(8500円)かも知れません。
味は絶品!花谷さんの御両親はフレンドリーな方で、気持ちよく食事を楽しめました。
リピート確定です。

そんなこんなで今年の夏も甲斐駒が熱い!

ガメラの唄

筑波大学附属小学校では毎年、林間学校として清里合宿が行われる。
僕は清里合宿が大好で今でもよく覚えているし、もしかしたら僕にとっての山の原点は清里合宿にあるかも知れない。

6年生の清里合宿では最終日は自由行動だった。
僕と数人の友人は赤岳に登る計画を立てたが、担任の先生はその計画を許可してくれなかった。清里にある筑附小の寮から美しの森まで歩き、県界尾根で赤岳を往復し、明るいうちに歩いて寮まで戻る。今考えるとちょっとクレイジーな計画だ。担任の先生が許可したくない気持ちも良くわかる。
図書館で山岳関係の本を読み漁り、計画書を作成し、絶対に登れる!と何回も先生を説得しようとした。
それでも「代替案を作りなさい」と言われ、仕方なく清里のプールで遊ぶ計画も立てた。

自由行動の前日の夜、各グループごとに翌日の行動予定などを発表した。
しかし、僕らはまだ赤岳登山を認められていなかったから「赤岳」と「プール」の2つのプランを発表した。そして最後に僕はこう言って発表を締めくくった。

「もしも赤岳に登れたら一生の思い出になると思います。」

全グループの発表が終わった後、先生やコーチが集まっている部屋に呼び出され、赤岳登山の許可がおりた。

清里合宿には担任の先生の他に雇われたコーチが同行していた。
そのうちの1人がガメラだ。本名は知らないが、面白いおっさんで、キャンプファイヤーの前でギター片手に唄っていた。
ガメラは「キャンプのおまじない」と言う唄を教えてくれた。苦しい時はこれを唄うんだ、と。もうどんな唄だったか忘れたけど、ワンフレーズだけは良く覚えている。と言うのも替え歌にして、みんなで笑っていたから。その替え歌の歌詞は「がんばってばてたらばかやろう」。

「がんばってばてたらばかやろう」のフレーズはずっと僕の耳から離れず、今でも時々口ずさみながら山を歩いている。そして、あの時の赤岳を思い出し、バカ野郎でもいいから頑張ろう、という気持ちになる。


週末は山岳医療パトロールの2回目でした。今回は僕たち山岳医・看護師の他に見学でWMAJ (Wilderness Medical Associates Japan)から3名の見学者がいらっしゃり、そこにヤマケイの取材とテレビ東京の取材を加えた9名パーティーとなりました。土曜日の早朝、登山口でお互いに自己紹介をして登山開始。
最初は調子良かったものの、しばらくするとWMAJの一名が遅れはじめました。
「確か、Y沢さんって自己紹介してたよな…。このペースじゃ予定通りのパトロール活動は無理かなぁ。」なんて心の中で思いつつ、Y沢さんのペースに合わせてゆっくり歩きました。
ペースは遅いものの、Y沢さん含めてWMAJの方々はみんな陽気で愉快で、長いはずの黒戸尾根もずっと笑いながら登っていたような気がします。

七丈小屋に到着した時には既に昼頃だったので山頂は諦めて、小屋周辺でアンケート調査を行いました。しばらくすると雨が降ってきたので小屋に撤退。夕食まではお喋り(取材?)なんかしながらゆっくり過ごしました。
Y沢さんは普段はネイチャークラフト教室をやったり小学生キャンプのコーチをやったりしていることがわかりました。
そしてWMAJメンバーからは「ガメラ」と呼ばれていることも…!

「あの…Y沢さん、この唄、知っていますか?」

…がんばってばてたらばかやろう…

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赤岳から20年に経ち、また甲斐駒で会えました。
小学生だった僕は、その時のガメラの年齢になりました。
ガメラはもともとおっさんだったけど、もっとおっさんになりました。

担任の先生はお元気だろうか?
あの時、一緒に赤岳に登頂した友達はどうしているだろうか?

これからも「キャンプのおまじない」を唄いながら歩いていきます。

戸台で「象の鼻」を登った

戸台で「象の鼻」を登りました。
本当は米子に行くつもりだったんだけど大雪を恐れて戸台に変更。けっこう冷え込んでいたので「一番星」か「七丈ノ滝」か「象の鼻」のどれかはいい感じだと期待して。

初日は偵察。
七丈ノ滝沢をつめると、「おお!象さんいるじゃん!」
見事な鼻がテラスをがっちり掴んでいます。見たこともない巨大な傘が耳を形成。なんと登っているクライマーもいました(M目さん?)。
こりゃやるしかない!



取りつきまでは七丈ノ滝F1を登って斜面をつめるんだけど、F1上部が普通に水の流れる滑滝状態なので左から巻いた。
今登っているパーティー(M目さん?)のトレースはF1登ってるんだけど、どういうこと?
取り付きにギアとロープをデポして下降。

夜は丹渓山荘。
チッペからチョコレートをもらいました。
ピッチ決めじゃんけんは負けてしまったのでチッペがメインの4ピッチ目を担当。ってことで1,3が僕。2,4がチッペです。最近チッペのじゃんけん力が上がってきている。僕も修行しなければ。

P2110293.jpg

絶対に1番に取り付きたいので、翌朝は2時に起床し、4時出発。
明るくなると同時に登攀開始。
朝日に染まる仙丈ケ岳が美しい!

1ピッチ目(Ⅵ-)ペコマ
3段にわかれたカーテン状。つららっぽくて気持ち良くはないけどそんなに難しくもない。要所で立って休めるので気持ち的にも楽。
このグレードをリードするのは初めてだけど、まあ、無難に登れたんじゃないかな。

P2120306.jpg

突き当りのハング下まで登って終了。

2ピッチ目(Ⅳ-)チッペ
バンドを左にトラバースするんだけど、途中がつながっていなくてドライに。
昨日のパーティーは一段下をトラバースしたようだけど、時すでに遅し。しょうがないので振り子で渡って、フォローはツララを利用してセルフ繰り出し。

P2120320.jpg

トラバース突き当りの氷柱で終了。

3ピッチ目(Ⅴ+)ペコマ
一部バーチカル氷柱だけど短い。ほとんどⅢ程度。ただ、今まで見えてなかった「鼻」が間近に迫り気分は高揚!
背後に広がる空間を感じながら最高の氷散歩を楽しめます。
終了点は「鼻」が伸びあがる2畳ほどの快適テラス。このテラス、最高!鼻の周りを1周回れます。

4ピッチ目(Ⅵ-)チッペ
いよいよ鼻の登攀。
この写真で快感は伝わるでしょ?

P2120352.jpg

この上には小さな傘(耳は巨大な傘なんだけどその左隣にも小さな傘がある)があって、この傘と岩との間をステミングとかしながら抜けて、傘の上に立って終了。氷の発達状態によってラインは変わるみたいだけど、今回のラインもすごく楽しかった!

下降はトポの通り左の樹林帯から抜けようと思ったんだけど、結局、滝のラインに出てしまい同ルート下降。前日のアバラコフを利用させてもらいました。樹林帯から降りるならもっと思い切って左まで行かないとダメでした。

そんなこんなで「象の鼻」はバリエーション豊かでとっても愉快爽快なルートでした。
グレードの事はよくわからないし(正直簡単に感じたので状態が良かったんだと思う)、天気とか色々な条件もあるけど、カナダも含めて今までで一番楽しいルートだった!

昨シーズンまではⅤのリードなんてほとんど経験無かったし、ましてやⅥが半分を占めるマルチアイスなんて登攀対象として捉えることもありませんでした。
カナダで修行して少しは自信がついて、こんな素晴らしいルートにトライできるようになったということが本当に嬉しいです。

次はあんなルートやこんなルートがやりたな!
おらっちガンバ!
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こんにちは!
いつも笑顔のペコマです!

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