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クラーク高校富士登山に「ガイド兼山岳医」として帯同した

僕が代表を務める山岳医療サポート事務所「山サポ」へ依頼があったため、「ガイド兼山岳医」としてクラーク高校富士登山に帯同しました。

山サポ
https://mountainmedicalsupport.com


僕たち山サポスタッフの特徴は、山岳医として帯同するだけでなく、ガイドも担当できることです。
今回も、山岳医として傷病者に対応するだけでなく、「ガイド兼山岳医」として1つの班を担当しました。



初日は9合目まで登りました。

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昼はダイナミックな景色を、夜は満月と夜景を、朝はご来光を堪能できました。

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翌日、山頂に向かって歩き始めると、影富士も見ることができました。

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山頂では、クラーク高校の名誉校長である三浦雄一郎氏と合流し、記念撮影をしました。

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高校生たちとの富士登山は僕にとってもとても良い経験になりました。
特に、「ガイド兼山岳医」という立場での登山は初めてだったので、刺激的でした。

通常、ガイド登山の場合、行程管理はガイドが行なっています。
つまり、歩くペースだったり、休憩のタイミングだったり、歩く順番だったり、水分やエネルギー補給のタイミングなどは、ガイドが管理しています。
しかし、傷病者が発生した場合、遅らせて歩かせるか?下山させるか?歩かせる場合は誰が付き添い、どのぐらいの遅れまで許容するか?などを考える必要がありますが、これはガイドの仕事でしょうか?それとも帯同した医師の仕事でしょうか?
ガイドも医師もそれぞれの知見に基づいて判断するはずですが、その判断に違いが生じる可能性も高いです。その場合は、相談して今後の方針を決めることになりますが、うまく連携がとれなければ勘違いやミスが生じるかもしれません。

一方で、医師がガイドも担当している場合は、一貫した判断ができます。
もちろん、他の人と相談することのメリットも大きいですが、山ではその場で即断即決が必要なことも多いので、「ガイド兼医師」の存在はとても有効だと感じました。

僕は、山岳医としてもガイドとしてもまだまだ未熟ですが、これからも多くの経験を積んで、様々な人の登山をサポートできるように頑張ります!

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米子沢でデートしてきた

本当は立山周辺に1泊2日で行こうと計画していたのですが、台風が来るので、日帰りで天気が良さそうな場所へ行くことにしました。
と言うことで、デート沢として名高い米子沢に行ってきました。

巻機山はスキーで何回か来たことがあるけど、夏は初めてです。

まず驚いたのは、沢の入り口を示す看板と、不用意に入山しないよう注意を促す看板が並んでいること。
「じゃあ、入口なんか示さなければいいのに」ってみんな思っているんじゃないかな。

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初めは水流の無い河原で、全くワクワクしません。

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が、ちょっと歩けば、期待を裏切らない素晴らしい沢が待っています。

今回はなんと「ザックを忘れる」と言う失態を犯したので、タウンユースのカバンで遡行します。デートらしくていいですね。
濡らしたくないし、中身も防水処置をしていないので、こんなスタイルになりました。

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フィストジャムで突破する滝があったりします。

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デートに最適な釜もたくさんあります。
水がぬるくて、雪渓が無いことがそれだけでわかりました。

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デートには不釣り合いな難しいクライミングもありました。
きっと普通は巻く場所なのでしょう。

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ちょっとしたゴルジュ突破なんかも楽しめます。
これはデートに最適なレベル。

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上部は広大な滑滝が広がります。
これは気持ちがいい!

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藪漕ぎもなく稜線に出ます。
さすがデート沢。

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と言うことで、台風前日に楽しいデートでした。

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前鬼川を遡行して釈迦ヶ岳に登った(インシデント報告含む)

増水の前鬼川を遡行しました。
途中で溺れかけるインシデントもあったので、それについても報告します。

予定では黒蔵谷を計画しており、まずは大阪のチャタニー宅に集合しました。
とりあえず前夜祭。

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黒蔵谷の入渓点まで来てみたものの濁流で敗退。

せっかくなので熊野本宮大社にお参りしました。

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ということで2回目の前夜祭。

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転戦先は前鬼ブルーで有名な前鬼川にしました。
デート沢としても有名なので、多少増水していてもなんとかなるでしょう。

普通に雨が降っているけど、午後には止む予定なので決行。

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前鬼ブルーのはずなのに、なんだか白濁していますね。

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それでも、通過不能な部分は無く、慎重に歩を進めていきます。

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そんな中、溺水しそうになるインシデントが発生しました。

10mの箱を泳いで、どん詰まりの1m小滝を越える場所。
僕が突破した後、次のメンバーが突破できずに1m小滝に引き込まれ沈んだ。
1度は浮かび上がり1呼吸したものの、再び沈む様子を確認したため、小滝上から僕が飛び込み、引き込まれる水流の外へ押し出した。呼吸ができるようサポートしつつ、水流が安定する場所まで泳ぎ戻り生還した。

おそらく、溺水者1人では生還は不可能だった状況なので、重大なインシデント、もしくはアクシデントと捉えるべき事象でしょう。
しかし、原因分析などを詳細に詰めていくと、結局、「リスクをどこまで許容できるのか」という議論に集約し、「個々の登山者に依存する」という結論に至ります。
なので、ここで細かい議論をするつもりはありません。

一般的なことを記すとすれば、

・引き込まれるリスクを低く見積りすぎていたかも知れない(これが原因の本質だろう。現場ではリスクは低いと考えてしまった)
・ライフジャケットを着用すべきだったかも知れない(僕自身は泳ぎと登攀のしやすさからほとんど着用することはない)
・下流側からロープで引ける状態にすべきだったかも知れない(結局、パーティーの最終メンバーにはそれはできない)
・実力差が明らかであれば、順番を考えて上記の通りロープを使用すべきだったかも知れない(その通りだけど、そこまでリスクを感じていなかった)
・先に荷上げだけでもすべきだったかも知れない(本質的な原因ではない)

と言ったところでしょうか。

ということで、原因の本質は「リスクを軽く見積りすぎた」ということになるでしょう。
これに対する対策は、「たくさんの経験を積む」だと思います。

これからも色々な山に色々なスタイルで登って、経験を積んでいこうと思います。

ここで、対策を「リスク管理を徹底する」や「安全第一で行動する」などに落とし込むことに対して、僕は否定的です。
これらの文言はなんだかそれっぽいけど、ほとんど何も言っていないのと同じです。もちろん心がけとしては重要だけど、僕たちは常に「リスクと安全のはざま」にいることを忘れてはいけません。
どんなに安全側に寄せてもリスクをゼロにはできません。リスクは必ずあるものと捉えて、それをどこまで許容するかの問題です。なので、リスクを少なくすると言うよりは、リスクを把握できる能力を身につけることこそが重要だと考えています。

そんなこんなで、無事(?)ビバーク地に到着。
いつものように楽しい夜がふけていきました。

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今回は「関西起点 沢登りルート100」の遡行図を参考にしましたが、謎が多かったです。
僕たちは孔雀谷右股を遡行したつもりでいたのですが、遡行図は違う沢のようです。
何がどうなっているのやら?
いずれにせよ、いい感じの沢で楽しかったです。

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釈迦ヶ岳に登って前鬼まで下山。
それなりに険しい登山道でした。

と言うことで、肝臓に負荷はかかったものの、夏休みを満喫しました!

小同心クラックを登った

3年ぐらい前まではランニングを頑張っていて、「トレラン」「クライミング」「沢登り」を融合させた発想で登山を楽しめるのではないか、と考えていました。
しかし、股関節を故障してからは「トレラン」も「クライミング」もパフォーマンスが落ちてしまい、悪化するのが怖くて習慣だったランニングも中止してしまいました。

このままだと山と真剣に向き合うような登山から離れてしまう気がして、股関節の障害と真面目に向き合うことに決めました。
そして今、定期的にリハビリに通っているのですが、骨盤周りの筋肉をうまく使うことで機能を維持する練習をしています。それを通じて、徐々に走ってみようという気になってきました。

ということで、前置きが長くなりましたが、小同心でプチ「ラン&クライミング」してきました。

7時、息子を保育園に送る準備をしてから、自宅を出発。
8時、赤岳山荘に到着し、ランニング開始。
この後、絶対にミスが許されないクライミングがあるので、追い込みすぎないように注意しつつ淡々と走る。

8時45分、赤岳鉱泉到着。
思ったより早い。疲労感もほぼない。
水だけ飲んですぐに出発。

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9時15分、大同心基部到着。
これまでと傾斜が異なるのに、同じようなペースで進もうとしてしまい、脚を消耗。
良い景色を眺めながら10分ほど休憩。

小同心基部までは、これ以上消耗しないようにゆっくり進む。

9時45分、小同心基部到着。
2人組の先行パーティーが準備していたが、先を譲ってもらった。

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装備は迷った結果、念のため軽量ハーネスを装着し、20mぐらいの細引きを携行することにした。
それと、自己確保用スリングカラビナ、アルヌン×2、120スリング×1、ビレイ器。
シューズはトレランシューズとTCプロ。
「ラン&クライミング」だと装備選択の戦略も面白い。これに「沢登り」が加わればますますゲーム性が増す。

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小同心クラックを夏に登るのは初めてだったけど、思ったより硬くて快適。
こんだけぶち立った壁をフリーソロできる場所は多くないだろう。

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10時、登攀終了し、縦走路へ合流。
適度な緊張感が快適だった。

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このまま大同心稜から下山する予定だったが、涼しくて景色もよく、このまま下山するのが勿体無いので赤岳を経由して南沢から下山することにした。
クライミングで脚が回復したのもあって、稜線を快調に走る。

11時、赤岳頂上着。

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11時40分、行者小屋着。

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12時30分、赤岳山荘着。

今回は、短い行程と簡単なクライミングでしたが、やっぱりこういうスタイルは楽しいと感じました。
股関節の状態と相談しながら、徐々に強度を上げていきたいと思います。

山での救助要請は「迷惑な話」なのか

山岳遭難がニュースになるたびに「勝手に危険行為をしているのだから助ける必要はない」というような話を聞きます。
これは極端な例ですが、「自分たちの税金を身勝手な登山者に使うべきではない」という論調は頻繁に耳にします。
僕はこう言う話を聞くたびに、悲しみと怒りを感じます。

人間は(少なくとも日本人は)自由に生きてよいはずです。
家でゲームをするのも、遊園地に行くのも、海で遊ぶのも、山に登るのも、自由です。
自由な時間に自由な活動ができるのは、成熟した豊かな社会である証拠だと思います。
そうやって自由に生きていけるように、社会の仕組みが作られ、税金を使って警察や消防が整備されていると認識しています。

なので、当然、登山者も救助されるべきです。

で、ここまでは言うまでもないことなのですが、登山者の中にも救助要請を「迷惑な話」と考えている人がいそうなので、そのことについて書きます。

先日、救助要請をした体調不良者の救助に関わりました。
そのことをSNSで投稿したら「迷惑な話ですね」とのコメントがありました。その投稿を見ていただいたということは、おそらく登山をされるか、少なくとも登山に興味のある方からのコメントだと思います。
このコメントの真意はわかりませんし、僕たちの活動を労う意味もあったのかもしれませんが、山で体調を崩して救助要請することは迷惑な話でしょうか?
もちろん、そんなはずはありません。
山でも町でも自宅でも体調を崩すことはあり、その時は救急車を呼ぶべきです(救急車のタクシー的利用のような問題はありますが、ここではそこは論点ではありません)。

では、どうして「迷惑な話」だと感じる方がいるのでしょうか。
おそらく、山での救助体制が十分整っていないので、「救助活動は特別なこと」のような印象を持っているのでしょう。
確かに、現実的には、山での救助活動にはリスクも伴うし、多くの人のサポートの上に成り立つので、町の救助とは異なります。しかし、本来は、町でも山でも同じシステムで救助活動が行われるべきだと考えています。
これは日本社会の課題です。

また、誰でも救助要請する可能性があることも忘れてはいけません。
「迷惑な話」と感じる方は、絶対に救助要請しないのでしょうか?
山に行かない人の場合、「自分は山に行かないから救助要請することはない」と考えるかもしれませんが、交通事故や急病で救急車を呼ぶことと、山で救助要請することは全く同じことだと私は考えています。
誰でも自由に生きてよいのだから。

さらに、「迷惑な話」という意見には、初心者や無知な登山者をバカにするような雰囲気も感じます。
誰でも最初は初心者です。失敗を繰り返しながら成長していくはずです。そんな過程の中で誰かに迷惑をかけることもあるとは思いますが、それでも登山を続けていけるような社会が良いです。
もちろん、準備をきちんとして、身の丈に合った行動を心がけることは重要なことですが、救助要請者がそれを怠っていたかどうかは判断できません。

山の世界は、挑戦に対して寛容であってほしいです。
初めての登山、健康に不安を抱えている人の登山、高齢者の登山、子供の登山。
そういう登山が認められ、応援される社会であってほしいです。
それを実現させるために少しでも貢献できれば嬉しいです。
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いつも笑顔のペコマです!

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